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「入門 起業の科学」を読んで

新規事業の開発に取り組んでいる中で、「入門 起業の科学」が個人的にとても参考になりました。特に印象に残った部分を紹介させて頂きます。

成功に至るポイントは PMF

「PMF(プロダクト・マーケット・フィット)」は、顧客が熱狂的に欲しがるものを作れる状態を指し、これを達成することが最大の難関かつ成功の秘訣とのことです。
「それはそうだろう。誰も『これはきっと誰も興味もたない』と思って作っている人はいないだろう。」と思いますが、顧客の心をつかめていない PMF 達成前の製品やサービスに投資をして失敗するケースが多いようです。
入門 起業の科学」では、PMF を達成するための成功の型として 4 ステップに因数分解して詳しく解説してくれています。

STEP 1 アイデアを検証する

誰もがすぐに「これはいい」と感じるアイデアは大抵の場合、誰かが同じように思いついて既に取り組んでいる可能性があります。大企業を同じアイデアで勝負したら勝機はほとんどないのです。
出典:入門 起業の科学

市場調査をしてニーズの高いサービスを作るのではなく「世の中にどんな課題があるか」という視点でスタートし、ビジネスモデルの仮説を立てることの重要性や、アイデアを整理する方法として「リーンキャンバス」が挙げられていました。

リーンキャンバスとは

9 つの要素からビジネスモデルを可視化するフレームワークです。
BizMakeさんの解説がとてもわかりやすかったので引用させて頂きます。

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出典:BizMake

民泊のプラットフォーム「Airbnb」のリーンキャンバス

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出典:BizMake

STEP2 課題の質を上げる

ここでいう課題とは、あなたが STEP1 で検証したアイデアの根本にある、顧客が抱えるはずの「痛み」のこと。…(中略)…こうした顧客の課題が本当にあるかを確認します。
出典:入門 起業の科学

過去の個人的な経験を振り返ってみると、「課題の検証」にはあまり時間をかけず、無意識のうちに自分の考えが正しいことを裏付ける情報ばかりに目が向いてしまっていた(いわゆる「確証バイアス」がかかっていた)ような気がします。
課題の質を上げる方法として、課題を抱える「ペルソナ(架空の顧客像)」の設定、それを深堀する「エンパシーマップ」の書き方、顧客の日々体験を想定した「カスタマー・ジャーニー」の作成、「潜在顧客へのインタビュー」のポイントなどが、具体的に書かれています。

STEP3 ソリューションの検証

ソリューションとはステップ 2 で実在を確かめた課題の解決策のこと。…(中略)…どういう機能や仕様の解決策を実現すれば顧客が快適だ、便利だと喜ぶかを、プロトタイプ(試作品)を作って磨き上げていく。これがこのステップの最も重要な目的となります。
出典:入門 起業の科学

顧客のイメージと課題が見えたらようやく解決策の検証にはいります。いきなり製品開発に着手するのではなく、解決策が有効か検証することが大切なようです。
解決策は「必須」「あったらよい」「不要」の 3 段階の優先順位にわけ、プロトタイプは「必須」機能にのみ絞って作成するのがよいとのことです。
「あったらよい」も作成すればよいのではと思ったのですが、「あったらよい」レベルの機能を多く実装してしまうと、最も力を入れて検証すべき「必須」の機能が顧客に受入られているか判断しにくくなるとありました。
実装すべき機能が見えたら、「エレベータピッチ」を整理することを推奨されていました。

エレベーターピッチとは

プロトタイプの「要点」を30秒で語れる整理されたもの。
「誰のために何をするか」を明確にし、チームの意識統一を図れるとのことです。

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出典:入門 起業の科学

エレベーターピッチの事例

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出典:入門 起業の科学

STEP4 人が欲しがるものを作る

まずは STEP1~3 で検証してきた課題の仮説、解決策の仮説を試せる最小限の機能を持った製品を発売し、市場の反応を調べて改善するサイクルを短期間で繰り返します。この仮説を試す最小限の機能を持つ製品を「MVP」(ミニマム・バイアブル・プロダクト)と呼びます…(中略)
出典:入門 起業の科学

MVP とは

顧客に価値を提供できる最小限のプロダクトで、完璧な製品・サービスではなく、顧客が抱える課題を解決できる最低限の製品です。
プロトタイプとの違いは、「お金を払ってもうかどうか」で、MVP は有料であるべきとのことです。理由は、無料で配布してしまうと「人々は製品にお金を払うだけの価値を感じるのか」という、PMF 達成に向けて一番重要な検証ができないためです。

MVP 投入後について

MVP を投入した後は、市場の反応を見ながら、顧客の声を集めつづけます。
そして、機能改善や UX 改善を行いますが、PMF を達成できる糸口が見つからない場合は、ピボット(大幅な軌道修正)をしてやり直す必要があるかもしれないとのことです。

KPI 設定について

市場の反応の分析は、定性的に気づきを得て、定量的に裏付けるが基本ですが、定量的な指標で特に注意したいものとして、「継続利用率」が挙げられていました。
また、結果を改善するためには優れた KPI 設定が重要で、その条件として以下の 4 つの条件を満たすものがよいようです。

改善につなげやすいか
 指標の範囲が狭く、具体的な対策をたてやすい。
計測しやすいか
 測定ツールがあり、ユーザー数の計測が容易。
MECE(ミーシー)感があるか
 製品の利用全体を通じて「重複なく、漏れなく」KPI でカバーできている。
インパクトがあるか
 製品全体のパフォーマンス(成約率など)向上につながる影響力がある。
出典:入門 起業の科学

「インパクトのある指標」とは、最終的なゴールを達成するための主因となり、この KPI を改善するとその後のプロセスで計測される KPI が大きく改善するため「先行指標」と呼ばれています。その中でも最もインパクトが大きいものが最重要 KPI となります。例えば、家計簿アプリで大成功した「マネーフォーワード」では、「ユーザーの銀行口座情報登録率」を重点的に追いかけているそうです。「マネーフォーワード」では、「ユーザーが銀行口座の情報を登録したら継続利用率が一気にあがる」という因果関係に気づき、これを最重要 KPI に設定することで、効果のある施策に注力できているようです。
一方で、以下のような KPI は結果指標であり、これらの数字が伸びても熱狂的に受入られているかはわからないとのことです。

  • ページビュー
  • 訪問者数
  • ユニーク訪問者数
  • ページの滞在時間

このような指標は「虚栄の指標」と言います。
最重要 KPI が伸びれば、自然に伸びるものと考えればよいかもしれません。

以上