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定期的なパスワード変更が不要になった理由

「いまだに、定期的にパスワード変更を求めるサービスが結構あるね。」という話を、CSIRT 業務経験のある妻に話したところ、「(パスワード)盗難対策として、必要だからじゃない?」という回答だったので、結構前に不要になった話をしました。
とても驚いていたので、ドヤ顔で講釈をはじめたのですが、うっとおしがられて聞いてもらえなかったので、こちらに書きます。

総務省の方針転換

過去、パスワードを盗難対策として、「定期的なパスワード変更は必要」とされていたのですが、2018年3月に総務省が「不要」と方針転換を発表しました。
簡単にいうと、「パスワードを定期的に変更すると、単純なものを設定したり、使いまわしたりしがちであるから」というのが理由です。

なお、利用するサービスによっては、パスワードを定期的に変更することを求められることもありますが、実際にパスワードを破られアカウントが乗っ取られたり、サービス側から流出した事実がなければ、パスワードを変更する必要はありません。むしろ定期的な変更をすることで、パスワードの作り方がパターン化し簡単なものになることや、使い回しをするようになることの方が問題となります。定期的に変更するよりも、機器やサービスの間で使い回しのない、固有のパスワードを設定することが求められます。

これまでは、パスワードの定期的な変更が推奨されていましたが、2017年に、米国国立標準技術研究所(NIST)からガイドラインとして、サービスを提供する側がパスワードの定期的な変更を要求すべきではない旨が示されたところです*1。また、日本においても、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)から、パスワードを定期変更する必要はなく、流出時に速やかに変更する旨が示されています*2
出典:総務省

逆に言えば、複雑なパスワードを使いまわさず設定するなら、「盗まれても利用される期間が短くなる」といった観点で考えても、有効な対策かもしれません。

パスワードは複雑なものを推奨

定期的に変更するよりも、推測されにい長くて複雑なパスワードの設定が推奨されています。
最近は、コンピューターの処理性能が飛躍的に向上したため、攻撃者は短時間で多くのパスワードを試行できます。*3
また、どれだけ長くて複雑にしても、今後さらにコンピューターの性能が向上した場合に解析される恐れがあるので、試行回数の制限や、二要素認証はしっかりと実装しておく必要があります。

参考書籍

以上

*1:NIST SP800-63B(電子的認証に関するガイドライン)

*2:https://www.nisc.go.jp/security-site/handbook/index.html

*3:いわゆる総当たり攻撃やパスワードリスト攻撃